この記事は、壁への取り付けDIYで失敗が起きる「共通構造」を定義します。
作り方や手順は扱いません。
成功例や対策も扱いません。
扱うのは、固定が成立する前提条件と、成立しない境界です。
失敗の定義
ここでの失敗は、取り付け部が荷重に耐えられない状態です。
取り付け部の「どこか」が荷重の経路になっていない状態です。
荷重が壁の表層だけに残る状態です。
荷重が下地まで届いていても、固定点と荷重方向が噛み合っていない状態です。
壁は「層」でできています
壁は、表面の仕上げ層と、面材層と、下地層で構成されます。
仕上げ層は、見た目を整える層です。
面材層は、壁面を平滑にする層です。
下地層は、荷重を受けて骨組みに渡す層です。
固定が成立する境界は「下地に届いているか」です。
表層に固定が止まると、固定は構造として成立しません。
固定が成立する条件は「荷重の通り道」です
固定が成立する条件は、荷重の通り道が連続していることです。
通り道は、取り付け物 → 固定点 → 下地 → 骨組みの順でつながります。
通り道の途中に、弱い層が入ると破綻します。
弱い層が「表層に止まる固定」です。
弱い層が「下地に届かない固定」です。
弱い層が「下地に届いても固定点が不足する固定」です。
弱い層が「荷重方向に対して固定点が効かない固定」です。
【図②:荷重と固定点の関係】
固定点は「数」ではなく「役割」で決まります
固定点は、荷重を受ける点です。
固定点は、位置と方向で役割が変わります。
壁への取り付けは、押し付けだけでなく回転が発生します。
回転は、片持ち構造として現れます。
片持ち構造では、固定点に引き抜き方向の力が生じます。
片持ち構造では、固定点にせん断方向の力も同時に生じます。
【図③:荷重方向(引き抜き/せん断)の分離】
失敗が起きる基本パターンは5つに分類できます
壁への取り付けの失敗は、原因の層が特定できます。
- パターン1:固定が下地に到達していない
- パターン2:下地が存在しない位置に固定している
- パターン3:下地に届いているが、固定点が荷重を受ける配置になっていない
- パターン4:固定点はあるが、荷重方向が固定点の得意方向と一致していない
- パターン5:下地自体が荷重を渡せない状態になっている
この5つは「構造のどこが通り道になっていないか」の分類です。
パターン1:下地に到達していない
固定が表層で止まると、荷重は表層で終わります。
表層は荷重を骨組みに渡す役割を持ちません。
この状態では、固定点が「下地の固定点」になっていません。
パターン2:下地がない位置に固定している
下地がない場所では、到達しても固定点が成立しません。
固定は面材層の中で完結します。
面材層の固定は、荷重の通り道が短くなります。
パターン3:固定点の配置が荷重を受けていない
下地に届いても、固定点が荷重を受ける位置にないと破綻します。
荷重は、固定点に分配される必要があります。
固定点が荷重の回転中心に近いと、荷重を受けにくくなります。
固定点が一点に集中すると、通り道が一点で詰まります。
【図④:回転中心と固定点の距離】
パターン4:荷重方向と固定点の方向が噛み合っていない
荷重には方向があります。
固定点にも方向があります。
荷重方向が引き抜きになると、固定点は引き抜きとして働きます。
荷重方向がせん断になると、固定点はせん断として働きます。
同じ固定点でも、方向が変わると成立条件が変わります。
パターン5:下地が荷重を渡せない
下地に届いていても、下地が荷重を骨組みに渡せない場合があります。
下地が細い場合があります。
下地が不連続な場合があります。
下地が劣化している場合があります。
このパターンでは、固定点は成立していても、通り道が下地で途切れます。
この基準記事で使う判断軸
派生記事は、判断軸ごとに条件を切り分けます。
- 壁固定:壁への固定という前提
- 下地:荷重を受ける層の有無と連続性
- 荷重:重さと回転を含む力の集合
- 固定点:荷重を受ける点の位置と役割
- 荷重方向:引き抜き/せん断の向き
境界と例外
この記事は、一般的な室内壁の「層構造」を前提にします。
壁材が一体で荷重を受ける壁は、層構造の前提が変わります。
取り付け物が壁ではなく天井や床に固定される場合は、荷重方向が変わります。
取り付け物が自立し、壁は位置決めだけを担う場合は、固定の役割が変わります。
境界が変わる場合は、派生記事側で前提条件として扱います。